白と黒の宴3 46
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「…そうなんだろうか」
市河の説明にアキラは考える。
ヒカルと会っている時の自分と、緒方や社に抱かれている時の自分は
違うものだろうか。
どちらが本来の自分なのだろうかと。
出来れば、ヒカルと会っている時であって欲しかった。
合宿当日、ヒカルから聞いていた社と落ち合う時間から考えても2人はなかなか
アキラの家にやって来なかった。
『約束する。…進藤には手を出さん。』
社のその言葉を疑うわけではないが、それにしても時間が掛かり過ぎると思った。
チャイムがなり、ヒカルの声が聞こえてアキラはホッとした。
玄関を開けた瞬間うんざりした表情の社と目が合った。
「フ−、やっと着いた。」
「やっと?」
「駅からここまで来るのにちょっと迷うてしもおて…」
社は少し頬がこけていたような気がした。
ヒカルが自分との事を社に気取られたくないと心配するのと同様に、
自分と社の事をヒカルに気取られたくないところではあったが、
社がアキラに対し、ごく自然な振る舞いで接してくれたのが有り難かった。
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