白と黒の宴3 50
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倉田が参加してくれる事になって、実際アキラにとって有り難かった。
実力もさる事ながら、次の日倉田がやって来た事で張り詰め過ぎていた空気が
少し変わった。芦原もそういうタイプだが、持って生まれた資質というものだろう。
倉田が聞き上手なところもあるが、食事をしながら社は自分の事を多く話した。
その中の、社がもともと東京生まれという事にアキラは納得した。
碁会所に親類と共にやって来た事や、北斗杯の後で食事をした時
東京の土地カンがある様子だったからだ。
今ではもう、どうでもいい事だったが。
そして、倉田が棋譜の研究をするように指示を出した時だった。
「…オレ、高永夏の棋譜、この間見た。」
唐突にヒカルがその名を出した事にアキラは違和感を感じた。
「強いだろ、アイツ!あれで16歳、オマエと1つしか違わないんだぜ」
唯我独尊的なところがある倉田がそう手放しで評価することもあまりないことだ。
アキラも父親から高永夏の話を聞いてその存在感はひしひしと感じている。
だが、ヒカルは誰から高永夏の事を聞いたのだろう。
つい先日まで、特にどの国のどの棋士を意識しているような事はヒカルは
全く口にしていなかったのだ。
「まア、こっちにも塔矢アキラ15歳がいるけどな」
倉田のその言葉に素直に頷けなかった。
自分が高永夏と並び立つ力を持っているのか、強気のアキラにも判断に迷う
ものがあった。
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