白と黒の宴3 55
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パンフレットの写真で見ると高永夏は少し大人びた風貌で綺麗な顔だちをした
少年だった。アキラは目蓋を少し揉んで、棋譜のコピー数枚が挟まったその
パンフレットを脇にやり、枕元のスタンドを消して眠りにつこうとした。
しばらくして、部屋の入り口の戸が少し開いたような気配があった。
アキラは直ぐにそれに気付いてすぐスタンドの明かりをつけた。
相手は一瞬驚いたように戸の影に身を引いた。アキラの心臓が不安で高鳴った。
「…ごめん、塔矢。起こすつもりなかったんだけど…。」
「…進藤」
開いた戸と柱の間に立っていたのはヒカルだった。
ヒカルはするりと細い隙間から部屋に入ると戸を閉めて、体を起こしかけた
アキラの傍に座った。
小さなスタンドの明かりの中でヒカルの前髪と瞳に映った光が揺れた。
「何か…寝つけなくて…」
「…社は?」
夜この部屋に来る者がいるとしたら社の方かとアキラは思っていた。
「あいつ死んでる。ガーガーすげえいびき。寝る前になんかごちゃごちゃ
聞いて来てさ、もオ…」
そう言いながらヒカルはごそごそアキラの布団の中に入って来た。
社の手前、必要以上にこういう事をしないでおこうと言ったのはどこの
誰だったやらとアキラは溜め息をついた。
それでも隣に横になったヒカルに布団をかけ直し、並んで横になった。
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