白と黒の宴3 58
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「…進藤がしたいようにしていいよ…。」
アキラのその言葉にヒカルは目を見開き、まじまじとアキラを見つめた。
促すようにアキラが首を立てに振ると、ヒカルは息を飲んで少し震える手で
アキラの夜着のボタンを外しにかかった。
手元が暗く、小さなボタンがもどかしそうな、不器用な手つきだった。
それが全て外し終わると同時にアキラはスタンドの明かりを消した。
まだ残っている痕跡を見られないために。
そんな理由とも知らず、特に疑問も持たない様子で暗闇の中でヒカルは
自分のパーカーを脱ぎ、アキラから上の夜着を取り払った。
そうして再び2人は直に素肌で抱きあった。
「…気持ちいいや…」
ヒカルが小さく呟く。
互いの胸をぴったりとくっつけ、肩に顎を乗せあって力一杯抱きしめあう。
アキラにはもう慣れた行為であったが、ヒカルにとっては生まれて初めての経験だった。
アキラの心臓が次第に落ち着き、鼓動が穏やかになるのと対照的に
ヒカルの心臓はアキラが心配になるくらいトクトクと激しくなるばかりだ。
「…どうしよう…」
困ったような、助けを求めるような声をヒカルが漏らした。
「この後、どうすれば…」
アキラはクスッと笑うと、ヒカルを抱きしめていた手を動かし、ヒカルの背を
優しく撫でた。ビクリとヒカルが身を震わせた。
「だから、進藤がしたいようにすればいいんだよ…。」
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