白と黒の宴3 58 - 61


(58)
「…進藤がしたいようにしていいよ…。」
アキラのその言葉にヒカルは目を見開き、まじまじとアキラを見つめた。
促すようにアキラが首を立てに振ると、ヒカルは息を飲んで少し震える手で
アキラの夜着のボタンを外しにかかった。
手元が暗く、小さなボタンがもどかしそうな、不器用な手つきだった。
それが全て外し終わると同時にアキラはスタンドの明かりを消した。
まだ残っている痕跡を見られないために。
そんな理由とも知らず、特に疑問も持たない様子で暗闇の中でヒカルは
自分のパーカーを脱ぎ、アキラから上の夜着を取り払った。
そうして再び2人は直に素肌で抱きあった。
「…気持ちいいや…」
ヒカルが小さく呟く。
互いの胸をぴったりとくっつけ、肩に顎を乗せあって力一杯抱きしめあう。
アキラにはもう慣れた行為であったが、ヒカルにとっては生まれて初めての経験だった。
アキラの心臓が次第に落ち着き、鼓動が穏やかになるのと対照的に
ヒカルの心臓はアキラが心配になるくらいトクトクと激しくなるばかりだ。
「…どうしよう…」
困ったような、助けを求めるような声をヒカルが漏らした。
「この後、どうすれば…」
アキラはクスッと笑うと、ヒカルを抱きしめていた手を動かし、ヒカルの背を
優しく撫でた。ビクリとヒカルが身を震わせた。
「だから、進藤がしたいようにすればいいんだよ…。」


(59)
「う、うん…」
アキラの言葉に頷き、ヒカルが左手をそっとアキラの脇腹に押し当てた。
ごくりと息を飲み、ゆっくりと表面にそって胸まで撫で動かす。
「あっ…」
ヒカルの指が一瞬アキラの胸の突起に触れて、今度はアキラが小さく体を震わせ
声を漏らした。暗闇で何も見えないのでヒカルはもう一度手で探り、
くっきりと勃ちあがったその突起部分を指で捉え、撫でた。
「あ、んっ!…」
ただそれだけの行為に、アキラの全身が粟立ち、ゾクゾクと震えた。
「何か…かたちが変わって来てる…塔矢のここ…」
ヒカルも興奮と好奇心を押さえられないようだった。
「…前に塔矢、棋院会館の廊下でオレのここに触っただろ。お返しだよ…」
アキラの胸に頬をつけて、ヒカルは悪戯っ子のようにアキラの片方の突起を
指で摘み、弄ぶ。そうしながらもう片方を口に含んだ。
「ん、くう…っ」
ヒカルの愛撫は、相手に快感を与えようとするというより、仔犬が乳を吸うように、
ただひたむきにスキンシップを求めようとする類のものだった。
そんな行為にアキラの体はアキラが自分でも戸惑うくらいに反応した。
「はっ、…っ、…んっ」
部屋の外に声を漏らすわけには行かず、アキラは自分の手の甲を口に当てた。
そして片手は頭の上に伸ばし、ヒカルにもっと自分を与えようとするように
胸を反り上げた。


(60)
ヒカルも本能的に自分の股間をアキラの下肢に擦り付け、快楽を得ながら
アキラの反応を更に引き出そうとするように指と口での愛撫を左右交互に繰り返す。
ヒカルの指が、舌が自分の体の上を動いている、それだけでアキラは
雲の上を漂うような恍惚感に包まれていた。
それは何の技術も経験もない単調な動きだったがアキラは満足だった。
何度緒方や社に抱かれても得られなかった高揚感と充実感があった。
「…く、…あ…っ、んーっ」
抑えても抑え切れない喘ぎ声が切れ切れにアキラの喉から漏れ、アキラは
我慢出来ず身を捩った。
「なんか…塔矢、かわいい…」
ヒカルが嬉しそうにアキラの体に両腕を回して力一杯抱きしめて来た。
興奮が頂点まで高まった勢いのままアキラのズボンを下着ごと引き下ろし、
自らも全てを脱いで全裸になった。
そうしてまた抱き合うと、またさっきまでと全然違う感触に浸れた。
無意識のうちにアキラは両足を大きく開き、ヒカルはその間に深く体を入れていた。
下腹部で互いの分身が密接し、熱と脈動を伝えあう。
触れあう部分が増えれば増える程もっと触れあわせたい、結びつきたいと言う
欲求が高まっていく。
ヒカルは少し下に体をずらしてアキラの細いウエストを片手で
しっかり抱くと、もう片手をその開いた下肢の間に這わした。


(61)
「んん!!」
ビクッと更に大きくアキラの体が震えた。
ヒカルの指がアキラ自身を捕らえ、形をなぞっていた。
アキラは息を止めた。まだ、緒方に性毛を剃られた状態から殆ど変わっていない。
ヒカルがその事に気付かない事を祈った。
「…塔矢、…お前…」
アキラは目を硬く閉じた。理由を聞かれたら、その時は全て話さなければならないと
覚悟した。

「お前の…スゲエ熱い…」
そしてヒカルの指は別へ動いていった。どうやらヒカルは特に何も
気付かなかったらしい。ほんの欠片も自分の事を疑っていないのだろう。
そんな限り無く無垢なヒカルが愛しかった。
それだけに、アキラは自分が果たしてこのままヒカルを受け入れていいものか
一瞬迷った。ヒカルを汚す事になりはしないだろうか。
その時、ヒカルの指がアキラ自身のその下の奥に在る入り口に触れて来た。
「あっ…、進…藤」
思わずアキラが腰を引こうとしたがヒカルは離してくれなかった。
ハアハアと、荒いヒカルの呼吸が激しく繰り返されていた。
アキラの同意を得る余裕など今のヒカルにはなかった。



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