白と黒の宴3 64
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「一応これでも真面目な現役高校生やからな。」
そう答える社にアキラが場所を譲った。社が顔を洗いながら尋ねた。
「…目エ覚めたら、進藤がおらへんのやけど。」
「進藤ならボクの部屋で寝てるよ。」
社は驚いたようにアキラを見た。
「お前らなあ…」
「君のいびきがうるさくて寝られなかったらしいよ。それでボクの部屋に逃げて来た。
で、話込んでいるうちに寝てしまった。ただそれだけだよ。それより社、朝食の
買い出しにつき合ってくれないか。」
アキラに真直ぐに見つめられてそう言われると、社は従うしかなかった。
家から数メートル離れた場所のコンビニに2人で出かける。
五月晴れを思わす、住宅街の静かな朝の光の中でアキラは真直ぐ背筋を伸ばし
先を歩いていく。
社は黙ってそんなアキラを見つめながら後をついていく。
「お前みたいな家の奴でもこういう店使うンか。」
飲み物を選んでいるアキラの背後から社が尋ねる。
「え?普通によく来るよ。今はほとんど一人暮しみたいなものだし。」
そう言いながらも、ジャージ姿の社はともかく、上品なデザインのサマーセーターに
黒髪を揺らすアキラの姿はどことなくコンビニの店内では少し浮いた存在に見えた。
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