白と黒の宴3 68


(68)
アキラは残った社とそれぞれ出かける準備をしていた。
早々とスーツに着替えて出かけるばかりのアキラに対し、社は鏡の前でネクタイを
締めるのに手間取っていた。
「お袋に習ったんやけどな…くそっ」
見兼ねてアキラが手を貸した。
「こっちに来て、…顎あげて…」
人のを結ぶのに慣れているわけではないが、何度か緒方にそうした事があった。
すぐ目の前で自分のネクタイを整えるアキラを、社は無言で見つめていた。
だが、耐え切れなくなったようにアキラの肩を両手で掴むとそのままアキラの体を
抱きかかえるようにして、顔を近付けた。
アキラの首を後ろから捕らえて唇を重ねようとした。
その時社は、アキラが無表情に自分を見ているのに気付いた。
大阪で会った時の、あの無機質で冷ややかな目だった。
「くそっ…!」
社は舌打ちするとアキラの体を離し、皮肉混じりに苦笑いした。
「…進藤が居た時とはまるで別人やな。」
「…そろそろタクシーが来る。出よう。」
何事もなかったようにアキラはそう言うと、カバンを手にした。
「進藤は知っとるんかな、お前の正体を…。」
社の言葉に、一瞬アキラの表情が強張った。そして社を睨んだ。



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