白と黒の宴3 69
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鋭く研ぎすまされた刃先のようなアキラの鋭い目付きに社は怯んだ。
「君には関係ない。」
冷たく言い放つアキラの背に、社はさらに言葉を投げ付ける。
「お前みたいな奴が、ホンマに進藤が相手で満足出来たんか。欲しくなったら
いつでも戻って来てええんや。オレは待っとるで。ヘヘヘ。」
アキラはもう振り返らなかった。社は笑いながらも小さく呟いた。
「…最悪や、オレ…」
移動するタクシーの後部座席で、アキラは窓の外の日差しに目を細めながら街を
眺める。
ヒカルと一緒の時の自分が本当の自分だと思いたかった。
自分は自分だ。本性もくそもない。
ヒカルが好きで居てくれる自分が本当の自分だと。
ヒカルはずっとボクだけを見てくれているはずだ。
「…高永夏…」
無意識にその名を呟き、眼前に近付くホテルの全景を見つめる。
ヒカルと、ヒカルが口にしたその名の者がそこに居る。
「…絶対に渡さない…。」
神の一手に近付く碁を紡ぎあう2人とは、ヒカルと自分だと信じたかった。
〔白と黒の宴3 終わり〕
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