白と黒の宴3 7
(7)
片膝を立てた緒方の両足の間に屈み込むようにしてアキラは剃刀を動かす。
切れ味が相当良く、勢いが余ると皮膚を切りそうで、アキラは左手を緒方自身から離し、
毛先を摘むようにして根元近くで一度短く切り、もう一度当てて剃る事にした。
自分でも馬鹿バカしい事をしていると思ったが、ただ緒方や社に
したいだけにされている事が悔しくて反発したかったのかもしれない。
右側をそうして少しばかり周囲をそり落とすと、今度は左側を始めた。
無気味なくらい緒方は黙ったままじっとしている。
特にスポーツをしていたとか、そういう話は聞いた事はなかったが、緒方の下腹部は
筋肉で固く引き締まり皮膚に張りがあった。
そして何より、その中央に雄々しく存在を主張する分身を持っていた。
その部分を目の当たりにするのもアキラは初めてだった。
これだけの質量を何度も自分の体が受け入れ飲み込まされて来た事が信じられなかった。
当然その都度、激しい苦痛を伴い、行為後も長く違和感に悩まされし体調も狂う。
その苦しみの一部分でも緒方にも負わせられたら。
「…つっ…!」
一瞬、アキラは微かに緒方が漏らした声の意味が分からなかった。
決して故意ではなかった。だが、考え事をしていたために毛足に刃が滑り、
左側の腹部の皮膚の上を掠めたのだ。
赤い線が走ったように見えたかと思うと、周辺の白いムースが朱に染まっていった。
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