白と黒の宴 1


(1)
体の奥に燻っていた火種は一時的にしろ、鎮火した。
ただ社との激しい性交渉の痕跡はしばらくアキラを苦しめた。
処構わず強く色濃く遺された刻印と、鋭く刺し貫かれた感触。
アキラは何度か猛獣のような生き物に犯されながら喰われる悪夢に苛まれた。
それ程に社の攻め方は執拗で激しかった。そして、熱かった。研究会の面々によって与えられた快感とは
全く違うものだった。時間的には短いものだったが、体を乗っ取られてしまうような、それこそ今にも
社に肉体を食い破られ血みどろになるのではないかという恐怖感があった。
それによってさらに感覚が研ぎすまされ高められた。自分でも驚くような声が自分の口から何度も漏れた。
二度と、会いたくない。

「寒いのかい?アキラくん。市河さんに暖房強めてもらおうか?」
ふいに声を掛けられ、弾かれたように顔を上げる。
「緒方さん…」
碁会所で緒方と顔を合わすのは久しぶりだとアキラは思った。
「震えていたようだったし、顔色も悪いな。」
「いえ…」
言葉少なに目を伏せ、アキラは並べて居た棋譜を片付けようとした。その手を緒方が掴んだ。
「初手天元か…。面白い打まわしだな。」
アキラはハッとなった。無意識のうちにあの時の棋譜を並べ返していたのだ。
興味深気に緒方が盤面を覗き込む。じっと見つめる。
アキラは、まるであの後の社との情交を緒方に見抜かれているような錯角を抱いた。



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