白と黒の宴 11


(11)
緒方はすぐに戻って来た。壁にもたれ掛かったまま動けないでいたアキラを
もう一度肩を抱くように引き寄せ、事務所のドアに鍵をかけて歩き始める。
アキラは遠慮して離れようとした。だが緒方は力を入れてアキラの体を強く引き寄せる。
歩く内にアキラは体重を緒方に預けるようになった。
緒方の広く厚い胸板に触れているとなんだかすごく安心できた。
少なくとも今は社の腕の幻影から引き剥がしてくれていた。

助手席のシートを幾分倒し加減にして、流れていく夜の街のネオンをぼんやりと眺める。
車は自宅ではなく、緒方のマンションに向かっていた。
「そんな状態の君を一人にさせておけない。」
本当は緒方は夜間も開いている病院にアキラを連れて行こうとした。アキラは必死にそれを断った。
体を見られるのだけはどうしても避けたかった。
あまりにアキラが嫌がったため、その代わり緒方の部屋で薬を飲んで休むことになったのだ。
「…どうりで何か様子がおかしいと思った。具合が悪いのに、わざとそれを誤魔化すように振る舞っていたのだろう。
まったく君は…」
緒方は片手で煙草を取り出しかけて、すぐにそれをしまう。
「元名人もそうだったよ。ギリギリまで我慢して、突然40度もの高熱を出して
倒れた事があった。君がまだ赤ん坊だった時かな。」
「すみません…」



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