病床小アキラ 11


(11)
 夕暮れが近付いても大きなボタン雪はしんしんと降り続いています。ようやくお仕事が終わった
お父さんは、外から帰ってくると急いでアキラくんのお部屋に行きました。
 右手にぶら下げたビニール袋がおかしな程似合いません。
「おや」
 そぅっと障子を開けたお父さんは、お部屋のはしっこにいる2人を見て目を細めます。
「サルの親子がいるのかと思ったよ」
「なんですかそれは……」
 緒方さんにくったりと抱き着いたまますっかり寝入ってしまったアキラくんを改めて抱え直して、
緒方さんは憮然としました。
「ハハハ、この間テレビで温泉に入るサルというのを見てね。仲睦まじげな様子が似てるよ」
 お父さんは口許を押さえてクスリと笑うと、手に持ったビニール袋をがしゃがしゃさせながら中に
入ってきました。部屋の中が暗くなっているのが気になったのでしょう、途中で立ち止まって電灯
の紐を引っ張りました。ちっちゃなアキラくんが手を伸ばして届くように、電灯の紐にはリボンが
括り付けられています。リボンの端には緒方さんが持ってきたウサギちゃんのキーホルダーが
ぶら下げられていて、紐が揺れるたびにチリリと鈴の音を響かせました。



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