病床小アキラ 14
(14)
アキラくんが起きてしまったので、そのまま夜ご飯になりました。
「ねえおがたくん、おいしいねぇ」
とろとろ半熟卵のオムライスをうさぎちゃんスプーンでぐちゃぐちゃにしながら、アキラくんは
上機嫌です。ほっぺたが赤いのは相変わらずですが、アキラくんは大分元気になり、一人で椅子に
座ることができるようになりました。緒方さんに抱っこされて眠ったのがよかったのでしょう。
「ホラ、ぐちゃぐちゃにしないでちゃんと食べなきゃね」
アキラくんの小さなお口のまわりには、半熟卵の黄色とケチャップの赤が景気よく混ざりあって
います。隣りに座っている緒方さんはティッシュを一枚取ると、お湯で湿らせてアキラくんの顔を
ゴシゴシしました。
「ねぇねぇ、おがたくんもおいしい〜?」
「おいしいよ」
緒方さんはアキラくんがはじっこに寄せているニンジンをこっそりご飯に戻しながら頷きます。
「おとうさんは〜?」
アキラくんはくるんと振り向くと、正面に座っているお父さんに訊ねました。お父さんのお皿にも
アキラくんと同じとろとろ半熟卵のオムライスが半分くらいまで残っています。ちょうどてっぺんに
日の丸の旗が刺さっていて、お父さんはいつも最後までその旗を倒さずに食べることを信条として
いました。今から旗の周囲3センチを残して手前側を食べる作戦のようです。
「おいしいとも。緒方くんは料理が上手だな」
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