病床小アキラ 15
(15)
「おいしいねぇ」
アキラくんははぐはぐとオムライスを頬張ってしみじみ繰り返すと、カップに手を伸ばしました。
プラスティックのカップに入っているかぼちゃのスープは缶詰めを牛乳でのばしたものですが、栄養が
たくさん入っています。少し温くなったったそれを、アキラくんはカップを両手で持ってコクコクコクと
一気に飲みほしました。
ふぅっと息を吐いたアキラくんを、お父さんと緒方さんは微笑みながら見つめています。緒方さんの
お皿はすでに空になっていて、お父さんのオムライスの旗は残念ながら志半ばで倒れていました。
「ごちそうさま〜」
アキラくんはぺこりと頭を下げます。ごはんを残さず食べるといつもお父さんが褒めてくれるので、
アキラくんは今日も頑張りました。
案の定、お父さんはエライエライとアキラくんの頭をポンポンと撫でてくれました。その度に裾から
香るお父さんの匂いは、緒方さんの匂いとは全然違いますが、アキラくんの大好きなものです。
「ねぇおとうさん、おそとであそんでもい〜い?」
「今日はもう暗くなっただろう、無理だよ」
アキラくんはクチビルを尖らせて、上半身を前後に揺らしました。アキラくんなりの不満の表現です。
「じゃああしたは〜〜?」
「それは明日にならないと判らんな。――さあアキラ、薬を飲みなさい」
緒方さんがキャップに注いでくれたイチゴ味の風邪薬を、アキラくんはコクンと飲みました。
|