病床小アキラ 17
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「プリンー!」
アキラくんは喜んで立ち上がると、ほっぺたに両手をくっつけました。
「座りなさい。お皿に出してあげよう」
「うん!」
お父さんは持ってきた白いお皿の上に、アキラくんの大好きなプリンを2つプッチンして、
アキラくんの前に一つ、自分の前に一つ置きました。
「おがたくんのぶんは〜?」
自分とお父さんの分しかプリンが置いていないことに気づいたのでしょう、アキラくんは
眉をきゅっと寄せてお父さんを見上げます。小さいアキラくんは、いつのまにか他人を気遣
うことを覚えていました。
ついこの間までは、緒方さんの分のプリンもなんとかして食べようとしていたあのアキラ
くんが、です。
お父さんはその成長ぶりに気づいて、目尻に涙がじわじわと浮かんでくるのを止めること
ができなくなりました。
「緒方くんは今日はもうお腹がいっぱいでいらないそうだよ」
袖口でそっと涙を拭い、お父さんはアキラくんの手にスプーンを握らせます。こちらもや
はり、プラスティックでできたオレンジ色のウサギちゃんスプーンでした。
フーンと一つ頷くと、アキラくんは早速お皿を揺らして、プリンのプルプル加減にうっと
りします。プリンが揺れるたびにカラメルソースが零れそうになるところなどは、アキラく
んにとって非常にスリリングな事柄なのです。
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