白と黒の宴 22


(22)
「…そうかも…しれません…。」
予想外のアキラの返事に言葉を失ったのは緒方の方だった。
アキラに鋭い視線を向けていた瞳を閉じ、顔を伏せ、小さく唸るような声を上げた。
アキラの手首を握る手に更に力が加えられ痛みにアキラも苦し気に肩を捩る。
痛いのは手首ではない。緒方の自分に対する気持ちに今気付いた。
そしてそれを裏切ってしまった事を思う胸が痛かった。
時折離れた場所から自分の事を見つめている緒方の視線に気付く事があった。
ただ互いに兄弟弟子以上の感情は持ち得ないと思っていた。
父と同様にどんなに碁打ちとして尊敬はしていても。
今となってはもう自分の方にその値うちが無いのだ。弟弟子であることさえも。
「…ボクは…」
アキラを押さえ付けたまま今だ動こうとしない緒方に語りかける。
「…ボクは、…あなたが思っているような人間ではありませ…」
アキラの言葉は緒方の唇によって閉ざされた。
時が止まったかのように感じた。

アキラは驚いて目を見張った。一瞬だけ触れあって離れた唇はアキラの耳元に寄せられた。
「…オレも…君が思っているような人間じゃない…」
そうして緒方の顔が目の前に戻される。アキラの目は見開かれたまま、再びその唇に緒方の唇が重ねられる。
最初は浅く、そして深く、強く押し付けられてきた。



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