病床小アキラ 22


(22)
 居間からアキラくんのお部屋までは、まっすぐに長い廊下があります。アキラくんはそこを緒方さんに
抱っこされながら移動していました。
「ねぇねぇおがたくん、あしたはおそとであそんでもいいかなあ?」
 アキラくんは顔を上げて、いつもよりずっと近くにある緒方さんの顔を覗き込みました。
「どうかなぁ。お父さんがいいって言ったらね」
「ん〜〜〜〜。ねぇねぇおとうさん」
 お父さんは2人の後ろをゆっくりと歩いています。アキラくんは身体を伸ばして、緒方さんの肩
越しにお父さんにアピールしました。アキラくんの熱い瞳に見つめられたお父さんは、薄く微笑むと
歩く速度を少しだけ上げて2人に追いつくと、アキラくんのおでこに手を当てました。
「――明日熱が下がっていたら、な」
 お父さんは眉を顰めてアキラくんに言い聞かせます。ご飯を食べたせいもあるでしょうが、アキラ
くんのおでこはまた熱くなりつつありました。
「も〜〜」
 アキラくんがクチビルを尖らせて、ゆらゆらと前後に揺れます。
「アキラくん、ご飯食べた後でモーモー言ってると牛さんになっちゃうぞ」
「なったっていいもんっ」
 緒方さんはオヤオヤと苦笑し、アキラくんの横顔を見て驚きました。おそとで遊べないのが相当
悲しいらしく、アキラくんのつぶらな瞳にはまたウルウルと涙が浮かびあがってきていたのです。



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