白と黒の宴 22 - 23
(22)
「…そうかも…しれません…。」
予想外のアキラの返事に言葉を失ったのは緒方の方だった。
アキラに鋭い視線を向けていた瞳を閉じ、顔を伏せ、小さく唸るような声を上げた。
アキラの手首を握る手に更に力が加えられ痛みにアキラも苦し気に肩を捩る。
痛いのは手首ではない。緒方の自分に対する気持ちに今気付いた。
そしてそれを裏切ってしまった事を思う胸が痛かった。
時折離れた場所から自分の事を見つめている緒方の視線に気付く事があった。
ただ互いに兄弟弟子以上の感情は持ち得ないと思っていた。
父と同様にどんなに碁打ちとして尊敬はしていても。
今となってはもう自分の方にその値うちが無いのだ。弟弟子であることさえも。
「…ボクは…」
アキラを押さえ付けたまま今だ動こうとしない緒方に語りかける。
「…ボクは、…あなたが思っているような人間ではありませ…」
アキラの言葉は緒方の唇によって閉ざされた。
時が止まったかのように感じた。
アキラは驚いて目を見張った。一瞬だけ触れあって離れた唇はアキラの耳元に寄せられた。
「…オレも…君が思っているような人間じゃない…」
そうして緒方の顔が目の前に戻される。アキラの目は見開かれたまま、再びその唇に緒方の唇が重ねられる。
最初は浅く、そして深く、強く押し付けられてきた。
(23)
押さえられた両手のまま、アキラの肩がカタカタ震える。
舌が差し込まれ、息もつけない程にこちらの舌を激しく吸い上げられ唇を奪われる。
そして離された唇は、肌に触れるか触れないかの場所を動いてアキラの首筋からさらに下へと移動して行く。
そして胸の突起周辺で、何かをまだ躊躇うように止まった。アキラが呼吸する度に胸が上下すると
僅かに緒方の顎に触れる。
それだけでも、神経が張り詰め敏感になった皮膚の表面が泡立って行く。
「お…が…た…さ…」
熱い息が、そこに降り掛かった。
次の瞬間甘い電流がアキラの胸の先端から体の深部に走った。
小さな悲鳴があがった。
「緒方…さ…っ!」
緒方がアキラの乳首を捕らえ、ゆっくりと唇で愛撫を始めたのだ。
「ダ…メ…ッ!…や…っ」
首を振り、何とか緒方の戒めから手首を振り解こうとアキラはもがいた。
だが、緒方の腕力の前にはなす術がなかった。社を遥かに上回る威圧感を感じた。
だが恐怖を感じる以上に、今アキラに与えられているのはどうしようもないくらいの甘い快感だった。
「う…ん…っ…」
緒方が触れる前から、そこはくっきりと形を保って硬く尖り立っていた。
夢の続きを待ち望んでいた場所だ。
アキラの体が真に望んでいたものが、緒方によって与えられようとしていた。
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