白と黒の宴 26 - 30
(26)
「い、いや…っ!!」
たまらず上半身を起こしてアキラはベッドの向こうへ手を伸ばした。だが緒方に引き戻され
腰を高く突き上げたほぼ四つん這いの状態にさせられた。
谷間の奥の慎ましやかだった窄まりは十分の唾液と刺激を与えられて膨らみあがり、
過去の記憶を蘇らせてさらなる熱と昂った異物を求めるように喘ぎ始める。
その部分に硬く尖らせた舌を差し込まれ確実に受け入れる準備を整えさせられる。
アキラはもう、声を出す事もなくシーツに顔を伏せ、全てが早く終わる事だけを祈った。
だが男のモノをそこに受け入れると言う事は、何度経験しても恐怖感がなくならなかった。
舌に代わって緒方の長い指が差し込まれる。
「う…ん…」
切な気にアキラは声を漏らした。数日後には対局で向き合う相手の指が今は
自分を陥とそうと内部で動いていた。
緒方がこの部屋に入ってくる前から既にそこは普通の状態ではなかった。
おそらく何人もの女性と交渉経験を持つ緒方には分かるはずだ。社にすら気付かれたのだから。
だが緒方は何も言わず、ガウンを脱ぎ下に履いていた物を脱いだ。
その気配は感じたがアキラは緒方の方を見なかった。
やがて熱い、何かとてつもなく大きな塊がその部分に触れて来た。
アキラは強く目を閉じ、唇を噛み締めてシーツを強く握った。
だが悲鳴を押さえる事が出来たのは最初のほんの数秒だけだった。
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体内に炎を宿しているのは自分だけではないのだとアキラは感じた。
今、その別な大きな炎がゆっくりと動き、自分の中に侵入しようとしている。
それはアキラとは比べ物にならない位、おそらくもう長い間、誰にも知られる事なく
静かに激しく彼の意識の下に隠されて存在してきたものなのだろう。
『緒方さん』
彼にそう呼び掛け駆け寄っていったのは常に自分の方からだった。
父と母の姿が見えない時は彼の姿を探した。
どんなに離れた場所に居ても、雑踏のざわめきの中でも彼は自分の声を聞き取り
傍に行くまで待っていてくれた。
その時返って来るのは、あまり自分以外には彼が周囲に見せない優しい笑顔で
ある事が多かった。その事に密やかな優越感を持つ事すらあったのに。
「…緒方さん…」
殆ど伝わらないくらいの小声で呟く。今の緒方は、アキラが知らない緒方だった。
緒方は表情なくアキラと自分の肉体の一部の接点を見つめる。
自分の腰幅より遥かに狭い小ぶりの臀部の谷間が無惨に引き広がり、淡く褐色づいた
中央の小門が鮮血を滲ませて緒方の昂りを受け止めようとしている。
少女のような白くほっそりした背中からウエストにかけてのラインが汗に濡れて震えている。
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緒方もまた相当の汗を滴らせていた。全身に力を込めてその部分に集中し腰を進める。
最初に先端の最も太い部分を窄まりに潜らせる時は一気にそれを行いアキラに声をあげさせた。
緒方は更にアキラのその部分に指を添えて左右に押し広げ分身を押し入れた。
「…う…」
シーツに伏せたアキラの口から苦し気に声が漏れる。
汗で額と髪に髪が貼り付ききつく閉じた目蓋の間で濡れた睫毛が震える。激しい痛みと心臓の鼓動が
腹部から下肢にかけて脈打っていた。今までの経験では出口に近い部分が最も痛みに敏感でそこを
通り過ぎると幾分か楽になったのである。それが今回はなかなかそうはならない。
あまりにも“不可能”な行為を強いられているのではとアキラは思った。
確実に緒方はアキラの中を進んでいた。それでもまだ半分程で、更に太い幹の部分が待ち構えていた。
「…チッ」
小さく舌打ちすると緒方は両腕をアキラの腹に回し、後ろに引き寄せた。
「あ…っ!」
突然上半身を起こされてアキラは驚いた。結合部分が軋み苦痛に顔を歪ませる。
緒方は壁に背中を持たせかけて胡座をかき、自分に持たれかけさせるようにして
アキラを座らせる形にしようとした。
「い、いやだ…っ!!」
アキラはもがいて逃げ出そうとした。だが強く腹部を抱き締められ腰を離す事ができなかった。
責め道具の類の椅子の上に座らされるようなものだ。
アキラは力の入らない四肢で必死に自分の身体を支えようとした。
そんなアキラの両膝の下に緒方の両腕が入れられ、持ち上げられた。
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「うああっ!」
足側を持ち上げられてアキラの身体が緒方の腰の上に沈みこんだ。
アキラは咄嗟に両手を緒方の胡座の膝の上に乗せて突っ張らせ、身体を支えた。
カタカタと全身を震わせて歯を食いしばり、体重がそこにかからないようにした。
「…手を離せ」
容赦のない緒方の言葉に首を振る。
「無理です…緒方さ…、お願…」
緒方は膝下に入れた腕によってアキラの身体を持ち上げた。
「おがっ…」
持ち上げられた身体は緒方の腰の上に落とされた。ズンッという衝撃で緒方のモノが
アキラの内部に突き上がる。手の支えなど意味をなさなかった。
「ひっ…」
再び持ち上げられる。アキラは首をよじって緒方の方を向き叫んだ。
「緒方さんっ!…やめて!!…っ」
ズンッと再び衝撃が走る。衝撃は4〜5回繰り替えされた。
最後は緒方が落ちるタイミングに合わせて腰を突き上げてきた。
その瞬間痛みと衝撃と共に電流のように何かが身体の深部を貫いた。
「…は…ああっ…!!」
ガクガクと身体を震わして涙をこぼし、ぐったりと緒方の身体に倒れこむ。
下肢がビクンビクンと激しく痙攣していた。根元まで全てアキラの中に入り切った。
身体を重ね切った二人の前方のシーツにアキラが放った白い体液が散っていた。
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「…く…う…」
他に例えようのない苦しさにただ低く呻き緒方の胸に身体を預ける。
快感など感じていたつもりはなかったが、腸壁を限界まで押し広げて擦り上げられた
凄まじい刺激にほとんど条件反射的に精を吐き出させられたのだ。
両膝の下から手を抜くと緒方はそんなアキラの上半身に腕を回した。
体内で緒方自身をきつく締め付けながらアキラの身体は緒方に強く抱き締められた。
…震えてる?…緒方さんも…
怒りからなのか、何か別の感情からなのか、微かだったが、アキラを抱く緒方の腕や肩は
確かに震えていた。
その手でアキラの顎を拾い横に向かせて、緒方が唇を重ねて来る。
先刻までの荒々しい行為とうって代わって柔らかなキスだった。
恐怖心で開けられなかった目を恐る恐る開き、アキラは緒方を見つめる。
「…軽蔑してくれていい…」
唇の先を触れ合わせたまま緒方が言葉を発する。
唇は何度も重ねられ音を立ててアキラの舌を探り吸い取る。
そこには多少人間的な感情を取り戻した風があった。だがアキラを捕らえられた腕の力は
緩められる事なく手が指先がアキラの身体を弄り始める。
長く愛撫されて敏感なままの胸の突起に再び刺激が加えられる。
「ふ…う…んっ」
乳首を弄られる感触に反応してアキラの体内が締まると、それに呼応するように緒方自身が
脈打ち、更に膨れ上がって内部を押し広げアキラに切ない悲鳴を漏らさせる。
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