病床小アキラ 27


(27)
「ちべたっ」
 冷たい空気がぴりぴりとほっぺたを刺激します。アキラくんは思わず両手で顔を押さえました。
 しかし、目をぎゅっとつぶって我慢していると、その冷たさも少しずつ楽になってきました。
 縁側からこっそりと身を乗り出して指の隙間から下を窺うと、いつもよりずっと近くに地面がある
ようです。そして、その地面はキラキラと光っていて、真っ白くて、そしてとても柔らかそうでした。
「ぴょんってして、いいかな……」
 アキラくんはカーテンに抱き着き、両方の足の親指をモジモジしながら独り言を言いました。ウズ
ウズと身体がうずいて、遊びたくて仕方がないのです。
「ね、ぴょんって、ぴょんってしちゃおうかなぁ」
 アキラくんはカーテンにしがみついたまま、何度も足踏みをしました。
 側には誰もいないのに、アキラくんは周りを気にして何度も右足をサッシの縁から出しては引っ込
めたりしています。ふかふかの雪に飛び込んでみたい気持ちはアキラくんの中にてんこもりでしたが、
お父さんと緒方さんに黙って出てきたことがアキラくんは気になっているのです。
「でも、ボク、おねつはないよねぇ」
 アキラくんは自分の手のひらをおでこにくっつけると『んー』と眉を寄せ、クチビルを尖らせながら
目を閉じました。おでこはひんやりとしていて、アキラくんはうふふと笑いました。



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