病床小アキラ 32


(32)
 耳を澄ますと、お父さんの控えめな足音がどんどん小さくなっていきます。
 アキラくんの身体が冷え切っていたせいか、緒方さんのお布団の中は信じられないほどに暖か
でした。
 お父さんに言われたとおりに、アキラくんはごそごそとお布団のトンネルを潜っていきます。
「あったかーいね。ほんとあったか〜い、ねぇ」
 アキラくんはブツブツ独り言を言いながら、緒方さんのシャツにタッチしました。ぐっすり
眠っているらしい緒方さんの背中はとてもぽかぽかしています。アキラくんは両手両足で緒方
さんの背中におサルのようにしがみつくと、両方のほっぺたをこすりつけてうっとりしました。
「ぽかぽかしてるねぇ……」
 緒方さんの背中はちっともふかふかではありませんが、その暖かさはまるで、お日さまをいっ
ぱいに浴びたお布団のようです。
 アキラくんはしばらくうっとりしたあと、ほっぺたを真っ赤にしながら、緒方さんの身体を
軸にして枕上を目指しました。
 お布団の中にずっと潜っていると、息苦しくなってくるのです。
 やがて、背を向けて眠っている緒方さんのすぐ隣に顔を出すと、アキラくんは冷たい空気を
お腹いっぱい吸い込んでふうっと吐き出しました。すると、緒方さんの薄茶色の髪の毛がふわ
ふわ揺れます。アキラくんは楽しくなって、深呼吸を繰り返しました。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル