病床小アキラ 33
(33)
そうこうしていると、緒方さんの背中が大きく震えました。そしてさらにお布団の中に潜り
込もうとするのを、アキラくんは慌てて起き上がって阻止します。
「ねぇねぇおがたくん、まだねんねなの〜?」
アキラくんの手はまだ冷たいのか、緒方さんのほっぺたをペタペタ叩くと、緒方さんは一層
ビクリと身体を震えさせ、『そうだよ。まだねんねなんだよ』と投げやりに呟きました。
その様子はなんだか怒っているようでした。でも、まだ3歳のアキラくんはまだ緒方さんに
本気で怒られたことがないので怖くも何ともありません。
今度はお布団の上から緒方さんの上に乗りあげると、アキラくんは緒方さんの腕の真上にお
腹を乗せてゆらゆらとバランスを取って遊びはじめてしまいました。
「おがたくんはあついねぇ」
「……あつい?」
「とってもぽかぽかしているよ」
アキラくんはまた両手を緒方さんのほっぺたにぎゅっと押し付けます。
「ね?」
緒方さんは大きく溜息を吐くとお布団の中でもぞもぞしながら身体を動かして、アキラくん
の方をやっと向きました。瞼を薄く開けて、けだるそうに何度も瞬きをしています。
「――アキラくんの手はね…。氷のように冷たいよ……」
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