白と黒の宴 35


(35)
その後は、あまり記憶にない。ただ、一方的な交わりではなく互いにきつく相手の身体を
抱きしめ合い、2度、緒方の熱を受け止めた。自分が何度到達したのかは分からなかった。

血の滲んだシーツを引き剥がされたベッドと、シャワーや濡れた壁から水滴が落ちるバスルーム。
ブラインドの隙間から光りが差し込む中、二人の姿は応接間のソファーベッドの上にあった。
裸で毛布にくるまり、緒方の胸に抱かれてアキラは深い眠りに落ちていた。
ふいに電話が鳴り、緒方が反射的に身体を起こしてソファーの脇のテーブルの上にあった
コ−ドレスフォンを取る。アキラも目を覚ました。
「…もしもし、あ、…いえ…」
緒方の顔色が変わったように見えた。電話の相手はアキラにも直感で分かった。
「…ここに居ます…。…はい、代わります。」
アキラもゆっくりと身体を起こす。光の中に痩せた白い背中が露になる。
一度保留ボタンを押すと、緒方は無言で受話器をアキラに差し出す。
受け取った時に触れた緒方の指先は少し冷たかった気がした。
「もしもし…、はい…。ええ、リーグの事でいろいろ…それでつい、遅くなって…」
母親からだった。旅先から家に電話して連絡が取れなかったためここにかけて来たのだ。
「わかりました…。ええ、伝えます。大丈夫、子供じゃないんだから…。」
アキラは電話を切ると、怪訝そうにこちらを見据えている緒方に言った。
「…父と母が日本に帰るのが少し遅れるそうです。」
もの言いたげな緒方を視線で制して続ける。
「…もう一晩、ここに一緒に居ていいですよね、緒方さん…。」



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル