病床小アキラ 36


(36)
 緒方さんのおでこに手を当てると、アキラくんのお父さんは眉を顰めました。
「ひどい熱じゃないか」
「……すみません」
「いや、謝らなくてもいいんだが」
 お父さんが手を退けると、正座したお父さんの隣に座っていたアキラくんもすかさず小さな
右手を緒方さんのおでこに乗っけます。そして難しい顔をして左手で自分のおでこを触り、今
度は伸び上がってお父さんのおでこに触りました。
「おがたくんだけあついねぇ」
 本当に判っているのかいないのか、アキラくんはいっちょまえにそんなことをコメントして、
小さな自分のおでこを緒方さんのそれにごっつんこさせます。寄せる波のように緒方さんを苦
しめていた頭痛はその衝撃のせいか一層強くなりました。
 緒方さんは内心困ってしまいます。
「こら、緒方くんが迷惑するだろう」
 その困惑を感じ取ったのか、お父さんはひょいとアキラくんを持ち上げると隣に座らせました。



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