病床小アキラ 4


(4)
 アキラくんは、お父さんと緒方さんが色々と話をしているのをそばで聞いているのが好きでした。
 2人の低い声に包まれると、それだけでアキラくんはとても安心するのです。お父さんと緒方さんが
お話しているそばでアキラくんがよくウトウトするのも、そういう理由があったのです。
 お父さんと緒方さんが一緒にいてくれれば、きっと眠れると思っていたアキラくんは、途方に暮れて
しまいました。緒方さんは大好きですが、今のアキラくんには緒方さんだけでは駄目なのです。
 その緒方さんも冷蔵庫にプリンを仕舞いにいってしまいました。
 窓から見える空は灰色で、重い雲がいかにも寒そうです。でも、小さな雪がちらほらと舞い下りて
くるのを見るたび、アキラくんはお布団の中でモゾモゾしてしまいます。
「あ〜あ、おそとにいっちゃおうかなぁ」
 大きな声で独り言を言うと、聞こえていたのか、緒方さんが「だめだよ」と言いながらお部屋に
入ってきました。両手にたくさんの荷物を抱えています。
「ねえおがたくん、眠くないのに、ねんねしなきゃだめ〜?」
「だめだって」
 緒方さんは笑っています。
 アキラくんがぷうっと頬を膨らませていると、緒方さんは持ってきたアキラくんのパジャマや
パンツを畳の上に置いて、アキラくんのおでこに手を置きました。
「だってアキラくん、起き上がれないくらい具合悪いんだろう?」
 熱もちっとも下がってないよ。緒方さんはひんやりとしている右手でアキラくんの汗にはりついた
前髪を後ろへなでつけてあげました。気持ちがよかったのか、アキラくんはいっちょまえに「ふう」と
大きく息を吐き出します。緒方さんは目を細めて笑い、小さな耳の後ろにも冷たい手をくっつけて
あげました。
「――早く元気になって、一緒にプリン食べようね」



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