白と黒の宴 4 - 5


(4)
アキラの中に入った時、自分が抱いているのが男とか女とか、そういう概念を一瞬で全て
打ち消されて取り込まれた。
目を固く閉じ、唇を噛んで自分の身体の下で必死に媚態を押さえようとするがその意志とは裏腹に
アキラの体内は艶かしく脈打ち、うねって社のモノをさらに飲み込もうとどん欲に蠢めいた。
声を出すまいとする傍から吐息が混じったハスキーな喘ぎ声が断続的に漏れていた。
『…や…ハア…、だめ…っ』
そしてクンッと腰を仰け反らして到達した瞬間のアキラの表情が忘れられない。
『ハアッ…あ…んんっ!!』
声が出るのは一瞬で、後はただ薄く色付いた唇を開いたまま切なそうに首を振り声なく喘ぐ。
硬く目を閉じ長い睫毛に涙を滲ませて震わせる。その一瞬の声を何度でも聞きたいと思った。
まだらにピンク色に染まった胸の小く感度の良い乳首をきつく吸い、
到達しきった彼の身体を更に愛撫し続けて彼がどうなるのか見届けたかった。
あの部屋で朝まで気を失うまで抱いてやりたかった。
その時の事を思い返すだけで社の雄の部分が再び硬く勃ち上がる。
だがもう少女を抱く気にはなれなかった。
「お邪魔しましたア。」
髪を整え、お嬢様学校の制服で身を固めた少女が明るく階下の応接間の母親に挨拶をして出て行く。
「あら、もうお勉強会は済んだの?」
「ええ。…ハルくん、何か疲れてるみたいやから。」
「また遊びに来てちょうだいね。清春、送ってあげなさい。」
そんな少女と母親のやり取りをぼんやり耳にする間も社の頭の中にはアキラの姿ばかりが映し出されていた。


(5)
「…ここで相手が投了しました。」
おそらく言わなくても緒方には分かるだろうが、そう言ってアキラは石を持つのを止めた。
棋譜を並べるだけであの時の社の視線が蘇り、体に纏わり付くような感触がした。
こちらの体の奥の凝った火種の存在を嗅ぎ取った社の目だ。
「ふむ…?」
やはり黒の最後の数手が引っ掛かるのだろう。緒方は黙って盤面を眺めている。
「白はアキラくんだね。」
何かを押し隠そうとするように無言で手早く石を片付けるアキラの様子に緒方は最小限の確認だけした。
「明子夫人も中国に向かったそうだね。」
「は、はい。昨日…」
「革新派の棋士二人を抱えて、大変だな。」
ふいに、緒方の方から別の話題に向かってくれた事にアキラはホッとして笑顔を漏らした。
「時間があれば、ボクも一緒に行きたかったんですが…」
だがすぐに真顔に戻った。時間がない理由は他ならぬ緒方との対局が控えているからだった。
緒方もアキラの心中を察したのか無言で見つめ返して来た。
「もう戦闘体制に入っているンですかあ?先生方。」
市河が緒方にブラックコーヒー、アキラに紅茶を煎れてテーブルに置きに来た。
「オレ達はいたっていつも通りだよ。なあ、アキラくん。」
緒方に頷き、市河から紅茶を受け取る。咽がからからに乾いていた。
一口飲んで深く息をついて背もたれにもたれた。



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