病床小アキラ 40
(40)
緒方さんはお布団の中で身体を仰向けにすると、ゆっくりと目を閉じました。
アキラくんはそんな緒方さんの様子を真剣な表情で見つめています。
「……アキラ」
お父さんが優しくアキラくんの名前を呼ぶと、アキラくんはおシリを半分お父さんの膝に
乗せた姿勢のまま動きを止め、黒目がちな大きな瞳でお父さんを見上げました。
いつもは『はいっ!』と元気よく右手でも挙げるところですが、今日はそういう気分では
ないようです。
そんなアキラくんを抱えて改めてきちんと膝の上に座らせると、お父さんは微笑みながら
そのさらさらツヤツヤのおかっぱを一撫でし、側に放っていたアキラくんのタイツやぷーちゃ
ん着ぐるみを指差しました。
「あれに着替えなさい。外に行くんだろう?」
「あのね…」
小さな声を聞きとめて、お父さんはアキラくんの小さな顔を覗き込みます。
「どうした?」
「……ううん」
アキラくんはお父さんの膝の上でしばらくモジモジしていましたが、やがておもむろに立
ち上がると洗濯物の中からタイツを見つけてきました。
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