白と黒の宴 41 - 45


(41)
遠回りな手順を省き目的に向かって身体を突き動かし、
最初の絶頂の余韻から解放しないままアキラを2度目の頂きに導いた時
緒方もアキラの中に放った。放ちながら更に激しく動かす。
内部を熱い体液で焼かれる感触の連続にアキラは悶絶し言葉を失う。
潤いが増した腸壁はいっそう滑らかな動きを緒方に許し、精を放ってもなお
衰えない勢いの楔を何度もアキラの体内に打ち付けさせる。
「ハアッ…うっ、…く、ハアッ…」
緒方の喘ぎ声が断続的にくり返され、再度アキラの中を焼く。
だが確実にアキラの体力的な限界が近付いて来ていた。
二日続けての激しい性交渉で肉体的にも負荷がかかり、このままでは対局にも
支障を来しかねない。それが分かっていた上での合意のsexである。
2度アキラの中に吐き出してもなお緒方は衰えを見せようとしなかった。
まるで姿が見えない何者かを威嚇するように緒方はアキラの中で動き続ける。
アキラの陰茎や乳首に愛撫を与えて再度同時に到達する事を強いる。
何度か意識を失いかけながらもアキラは緒方の望みに応えようとした。
体内で緒方が最大に膨らみ上がった気がした。そうやって内壁を押し広げられるだけで甘い
感覚が身体の奥に走る。
3度目の緒方の熱の放射がされた時にアキラの身体の奥深くからも
外へ向けて熱が駆け抜けて行った。
互いに全身に汗を伝わらせ激しく痙攣し合う。
深く繋ぎ合ったまま唇を重ねて強く抱きしめ合った。


(42)
「昨日はすみませんでした、市河さん。心配かけてしまって。」
「ううん、いいのよ。それより、もう具合はいいの?アキラく…」
夕刻に碁会所に顔を出し、そう声を掛けて来たアキラに対し市河は応えようとして息を飲んだ。
アキラの後ろに寄り添うように緒方が立っていたからだ。
普段見なれたはずのそのツーショットにもかかわらず碁会所の中に居た常連客らにも一種
緊張感のような空気が漂った。
明日、二人が本因坊リーグでぶつかる事は誰でも知っている。
密かに勝つのは緒方か、はたまた若先生かと賭けをしている連中もいた。
そして門下生同士の直接対局だけに当人同士にもそれなりの意識が流れているのではと
周囲が勝手に憶測していたのだ。
だが普段通りに二人は言葉を交わし、それぞれの指導碁の席へと移動する。
「やはり我々とは精神力が違うんだろうねえ。」
常連の一人が感心したように緒方とアキラの姿を交互に見遣る。
市河もアキラの表情が明るく穏やかなのにホッとしたようだった。
「ここのところアキラ君が少し元気なかったから心配してたけど、取り越し苦労だったみたいね。」

予定が入っていた分の指導碁をそれぞれ終えると、緒方とアキラは揃って帰り支度をする。
緒方が車でアキラを家まで送るらしい。
その時まだ完全に復調していないためかアキラが少しよろめいて椅子にぶつかり、それを
緒方がしっかりと抱きとめた。


(43)
「すみません、緒方さん。」
「…いや、」
そうして再び連れ添って碁会所を出て行った。市河はしばらくぼーっとそんな二人の様子を眺めていた。
アキラを抱きとめた時緒方のアキラを心配そうに見つめ、アキラの方もそれをなだめるような
表情で見つめ返していたが、何となくそこに誰も入り込めない世界が見て取れたからだ。
「…まさかね。」
市河は変な妄想を浮かべてしまった自分に顔を赤くして仕事に戻った。

「いろいろありがとうございました、緒方さん。」
自宅前に到着して、助手席のシートベルトを外しながらアキラは礼を言った。
だが緒方はハンドルに手を掛けたままアキラの方を見ようともしない。
「…明日は全力で戦わせてもらいます。」
「…ああ。」
アキラの言葉に低くそれだけ答えるとエンジン音を響かせ、緒方の車が遠ざかって行った。
まだ両親は帰って来ておらず、家には誰も居なかった。
当初予定になかった高永夏という若手棋士との対局を韓国でする事になったからと言う事だった。

昨晩あの後シーツを取り替え終えたあの広いベッドでアキラは眠った。
緒方はソファーで過ごし、夜中に一度熱を計るように額に手を当てて来た以外は
もうアキラに触れて来なかった。


(44)
今朝目を覚ましてからずっと緒方と一緒に過ごしたが、碁会所に向かってここに戻って来るまで
緒方とは特に何も言葉を交わさなかった。
殆ど一体化してしまうのではと思えた位重なりあった精神と身体を、そうして互いにゆっくりと
引き離さそうとするためかのようだった。明日の一戦の為に。
『…オレも…君が思っているような人間じゃない…』
おそらく内部にいろいろな思いを抱えながらそれを押しとどめて緒方は自分を解放してくれた。

肉体が成長すると言う事は理性で押さえるのが困難な欲求を抱え込む事でもある。
自分は無意識にヒカルをその対象にして炎を生み出した。
社によってその炎をさらに大きく自分では制御出来ないものにされてしまったと思った。
それを緒方が救ってくれた。
病魔のように体内のあちこちを蝕んでいた淫火が、より激しい炎によって
せん滅されたように消えたのだ。
今後緒方は社のように己の欲望のみで強引に身体を要求する事はないだろう。
どういう形になっても緒方に対する強い親愛感を持つ事に変わりはない。

ただとにかく今は明日の一戦の事に精神を集中させたかった。
自分は人である前にプロ棋士なのだ。
そう決意し、アキラは自分の部屋の囲碁盤に向き合った。
ただ碁笥から取り出した石は、その時やけにひんやりと指先に冷たく感じた。


(45)
碁会所に流れていた空気は強ち常連客らの過剰反応とも言えなかった。
棋院会館の対局室もまた、そこに座してその時を待つアキラを押し包むようにして
いつもよりいっそう張り詰めた空気を漂わせていた。
片や新世代旗手の二冠のタイトルホルダー、片や若干15才でリーグ入りを果たした
気鋭の新進棋士。
その上同門対決となればいかに歴戦を見届け慣れた囲碁関係者とは言えその一局に
注目を集めざるをえない。
彼等の目には口には出さなくとも電撃的に引退した囲碁会の覇者塔矢元名人の息子である
アキラの勝利を期待するムードが色濃く現われていた。
理想ではなく、現実に囲碁会を揺るがすより大きな新しい波というものを誰もが自分の目で
確かめたがっていた。
アキラが戦わなければならないもう一つの敵はその視線だった。
ただ緒方を待つ間不思議なくらいアキラは落ち着いていた。
まだ微熱は続いていた。だがそれは心地よい熱だ。
おそらく自分はもう炎を抱かずには生きてはいけない。
これは持って生まれた気質であり、業だ。
ならばその炎を支配しなければならない。それがどういう名の炎であっても。
フッと口元に笑みがこぼれた。それを見た記録係りの者が怪訝そうに視線を送って来る。
確かに、慣れて来ている。心のどこかでより強い刺激を得たいと望んでいる。
身を焼き焦がされる匂いを求めないではいられない自分の本性に目覚めつつあった。



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