病床小アキラ 42
(42)
「…オレはいいから、行っておいで」
いつから聞いていたのか、眠っていなかったらしい緒方さんは薄く目を開けると、手を
伸ばしてアキラくんのフードの位置を少し直しました。目深に被っていたフードを後ろに
ずらすと、たちまちアキラくんの愛らしい顔があらわれてきます。
「アキラくん、外で遊びたいんだろ?」
「……ううん」
アキラくんはプルプルと首を振りました。あんまり一生懸命に首を振ったので、折角緒
方さんが直してくれたフードも外れてしまうほどの勢いです。
「緒方くんもああ言ってるんだから、アキラ」
アキラくんがどんなに外に出たかったかを知っているお父さんです。折角暖かく着込ん
だのにと、お父さんは少し残念に思いました。
しかし、アキラくんはお父さんの右の人差し指をちょこんと握って『あのね…』と小さ
く呟くのです。
「おとうさんしらないの?」
緒方さんのおでこにまたちょこんと手を当てて、アキラくんはお父さんを見上げました。
「あのね…。――ひとりぼっちはさびしいんだよ」
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