病床小アキラ 47
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洗面器には氷水の中にタオルが浸してあります。アキラくんは冷たさに眉を顰めながらタオ
ルをきつく絞り、一度それを広げて両手で包みました。
不思議そうな顔で自分を見ている芦原さんに気づくと、アキラくんは再びタオルを畳み、両
手で挟んで、時には軽く叩いたりしています。
「冷たすぎて、緒方さんがビックリしちゃうといけないから」
「ビックリさせちゃってもいいんじゃない? 冷たいと気持ちいいよ〜〜」
「そうかなあ……」
アキラくんは首を傾げます。ですが、この洗面器いっぱいの氷も芦原さんの緒方さんへの心
遣いに違いありません。アキラくんは畳んだタオルをまた水に浸すと、ぎゅっと絞り、緒方さ
んのおでこに軽く乗せました。
すると、それまで穏やかだった緒方さんの眉根がきつく絞られます。
「あ」
「あらら、目が覚めちゃったねぇ緒方さん」
長い睫毛に縁取られた緒方さんの目がゆっくりと開くのを、アキラくんと芦原さんは息を潜
めて見つめました。
「……アキラくん……?」
2人にじっくり観察されながら、まるでお姫様のように目覚めてしまった緒方さんは、熱で
潤んだ眼差しをアキラくんに向けます。
「起こしちゃいましたね。具合はどうですか?」
「タオルが気持ちいいよ。――それよりもどうして……」
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