白と黒の宴 5


(5)
「…ここで相手が投了しました。」
おそらく言わなくても緒方には分かるだろうが、そう言ってアキラは石を持つのを止めた。
棋譜を並べるだけであの時の社の視線が蘇り、体に纏わり付くような感触がした。
こちらの体の奥の凝った火種の存在を嗅ぎ取った社の目だ。
「ふむ…?」
やはり黒の最後の数手が引っ掛かるのだろう。緒方は黙って盤面を眺めている。
「白はアキラくんだね。」
何かを押し隠そうとするように無言で手早く石を片付けるアキラの様子に緒方は最小限の確認だけした。
「明子夫人も中国に向かったそうだね。」
「は、はい。昨日…」
「革新派の棋士二人を抱えて、大変だな。」
ふいに、緒方の方から別の話題に向かってくれた事にアキラはホッとして笑顔を漏らした。
「時間があれば、ボクも一緒に行きたかったんですが…」
だがすぐに真顔に戻った。時間がない理由は他ならぬ緒方との対局が控えているからだった。
緒方もアキラの心中を察したのか無言で見つめ返して来た。
「もう戦闘体制に入っているンですかあ?先生方。」
市河が緒方にブラックコーヒー、アキラに紅茶を煎れてテーブルに置きに来た。
「オレ達はいたっていつも通りだよ。なあ、アキラくん。」
緒方に頷き、市河から紅茶を受け取る。咽がからからに乾いていた。
一口飲んで深く息をついて背もたれにもたれた。



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