白と黒の宴 50
(50)
「…アキラくんは全力で戦ったよ。その上で負けたのだ。」
アキラに代わって緒方がそれを彼等に答えてくれた。
もう一度アキラは緒方を見た。精神力で全てを遮断し打ち切った今は緒方のその目に
人間的な感情が宿るのが見えた。
その目を見た時、アキラは緒方が望んでいるものを敏感に察知した。
緒方が合図を送るようにアキラを一瞬見つめ対局室を出て行くとアキラもその後を追った。
「…緒方さん…!」
車に乗り込もうとする緒方に声をかけると緒方が振り向き、視線で指示する。
アキラが助手席に乗ると車はエンジン音を響かせて急発進した。
アキラの心臓は激しく鼓動していた。その振動が指先まで伝わりそうだった。
そして緒方からもそれは伝わって来そうだった。
あの場所にいた誰にも分らない、二人だけに通じ合う心音はすでにアキラが
投了した時点から共鳴し合っていた。
緒方のマンションに着き、玄関のドアを閉めた瞬間から二人は唇を重ね合い抱きしめ合っていた。
アキラが緒方の眼鏡とネクタイを外すのと同様に緒方もアキラのネクタイを緩め、シャツの
ボタンを外した。
アキラもまた緒方のシャツのボタンを外そうとするのを緒方が止めさせて壁に押し付け、
アキラのズボンのベルトを外して一気にブリーフごと引き下げると片足を抱え上げた。
「っあ…!!」
緒方は自分のズボンのベルトを外し必要なだけズボンを下げると立ったまま
壁に押さえ付けたアキラを貫いた。
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