病床小アキラ 53


(53)
 最近使われた様子がないそれらを洗っているアキラくんの背中を、芦原さんはニヤニヤ笑い
ながら見ています。
「アーキーラ」
「なんですか?」
 アキラくんはまた別の引き出しを開けて布巾を取り出すと、お皿を拭いて芦原さんに手渡し
ました。新しい気分で新年を迎えられるように年末に髪を切るのが塔矢家の習慣ですが、首を
傾げるアキラくんのおかっぱもいつもより短く整えられています。   
「よくここでご飯食べたりする?」
 赤飯のおにぎりと全ての種類のおかずを少しずつお皿に移して、芦原さんは早速大きな口を
開けておにぎりを頬張っています。
「どうしてですか」
「普通、そんなところに箸や布巾があるなんて思わないだろ」
 アキラくんはヤカンを火にかけて戻ってきました。芦原さんが食べている隣に座り、頬杖を
ついてその様子を眺めています。
「たまにですよ。お母さんたちがいないときに夕食をご馳走になったり」
「いいなー緒方さんの手作りのご飯。あの人器用そうだもんな。それよりさ、おにぎり、もう
1つ食べていい?」
 そう言いながらも、芦原さんは既に白いおにぎりを手にしていたのです。



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