病床小アキラ 55


(55)
「ハハ、夢か」
 緒方さんは照れてひとりで笑った後、ふらりと立ち上がって寝室を後にしました。アキラく
んたちのお陰か、随分楽になったようです。
 キッチンへ続く廊下を歩いていると、てっきり帰ってしまったと思っていた2人の声が聞こ
えて来ます。緒方さんは思わず口元を綻ばせました。
 ――アキラからも頼んでくれる?
 ――ハハ、いいですよ
「何を頼むんだ……?」
 リビングに入りながら独り言のように呟いた言葉を、2人は聞き逃したりしませんでした。
一斉に振り向くとエヘヘと笑って誤魔化します。 
「あ、緒方さん、ごはん食べられますか? お母さんにお弁当作ってきてもらったんですけど。
緒方さん、年末から寝込んでたからおせちまだ食べてないでしょ」
 アキラくんは立ち上がり、緒方さんに椅子をすすめました。
「いや、今はいいよ。それよりも、水を一杯もらえるかな?」
 緒方さんは椅子にどかりと腰を下ろすと、アキラくんが手渡してくれたコップを呷りました。
喉が渇いていたのか、緒方さんはすぐにお代わりを頼みます。それを見越していたのか、アキ
ラくんはスポーツドリンクのペットボトルを手に持ったままでした。
「ねえ緒方さん。ごはんが駄目なら、りんごはどうです?」
 緒方さんの差し出すコップにお代わりを注ぎながら、アキラくんはそんな提案をしました。



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