白と黒の宴 56


(56)
「…一つだけ答えて欲しい」
頂上に向かう中でふいに問われ、アキラは浮遊していた視線をかろうじて緒方の方に戻す。
「オレに抱かれた事を…後悔しないか」
アキラは一瞬言葉に詰まったように緒方の目を見つめると首を横に振った。
「…後悔なんて…ボクは…、…ボクは…、…緒方さんが…」
その先の言葉を制するように緒方の手がアキラの顎をとらえた。
「…ならいいんだ…。」

二人とも全身に汗を纏っていた。ベッドを軽く軋ませる音はいつまでも部屋に響いた。
「おが…さ、も…う…、っ…」
アキラの下腹部部分はもう何度か放った自分の体液でベトベトになっていた。
その濡れそぼったアキラのペニスはなおも緒方の動く指の中で膨らみ雫を吐き続ける。
体内でもまだ緒方自身が動き続けていた。
意識を失うまでに自分が何度到達したのか覚えていない。
ただひたすら緒方によって甘く深い快楽を与えられ続けた。
だがその夜はもうアキラがどんなに望んでも緒方の放熱がアキラの中を焼く事はなかった。

朝、アキラが目を覚ますと隣に緒方の姿はなかった。両手の拘束は解かれて全身の汚れが
きれいにぬぐい取られていた。
もみくちゃになったはずのシャツも脱がされて代りに前もって用意してあったのか新品のシャツと
下着がベッド脇の床に置いてあり、スーツの上下もハンガーに掛けてあった。



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