病床小アキラ 59


(59)
「別にそれでも構わんが…」
 緒方さんは苦笑しながら手を伸ばしました。ですが、アキラくんはリンゴを掴んだまま首
を振りました。緒方さんにはちゃんとしたうさぎりんごを渡したかったのです。
「あと少しだったのに…」
 悲愴な表情で耳を摘み上げるアキラくんからリンゴを取りあげ、芦原さんはそれをシャク
シャクと片付けてしまいました。
「失敗作はオレが食べてやるよ。早く次にかかれアキラ、黄色くなっちゃうぞ」
 アキラくんは頷いて、次のリンゴにナイフを入れました。
 昔から、ウサギのリンゴはアキラくんの元気のもとです。
 風邪を引くたびにウサギのリンゴがアキラくんに元気を連れてきてくれたのです。
「うさぎのりんごを食べて、早く元気になってください」
 3分の2の確率で成功したウサギリンゴを皿に乗せて、アキラくんは緒方さんの目の前に
そうっと置きました。耳が短いのから、細長いのまで、いろんなウサギがお皿の上で丸くなっ
ています。
「ボクと対戦して、『風邪ひいてたから全力を出し切れなかった』なんて言い訳、してほしく
ありませんから」

 緒方さんとアキラくん、2人の初めての対局はすぐそこまで迫っていました。

                     やっとおわり



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