病床小アキラ 6


(6)
 緒方さんは台所からリンゴと包丁を持ってくると、アキラくんの目の前でリンゴをぱかっと割って
うさぎりんごを6つ作りました。うさぎりんごをお皿に綺麗に並べていると、アキラくんが目を輝かせて
その様子を見つめています。
「起き上がれるかな?」
 緒方さんはアキラくんをひょいとあぐらをかいた自分の膝の上に抱っこしました。ぬくぬくのアキラ
くんが寒くないように、タオルケットでくるんであげます。
「寒くない?」
「うん」
 緒方さんの膝の上の感触が珍しいのか、アキラくんは何度か座り直して、やがてベストのポジションを
確保しました。緒方さんの胸に頭をもたせかけて、はふぅ、と深く息を吐きます。
「ハイ、どうぞ」
 お皿をアキラくんの前に持ってくると、アキラくんはうさぎりんごを一つ手に取りました。両手で持って
まじまじと観察しています。特に耳の付け根のあたりは念入りにチェックしているようです。
 緒方さんはその様子を笑いながら見守っています。
「――アキラくん、早く食べなきゃ色が変わっちゃうよ」
 促されて、アキラくんはようやくうさぎりんごを食べる気になったようです。
「うさぎちゃん、たべちゃってごめんね?」
 首を傾げながら心底申し分けなさそうに謝ると、アキラくんは小さなお口を大きく開けて、しゃくしゃくと
うさぎの形をしたりんごを食べてしまいました。



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