白と黒の宴 69


(69)
アキラの傘の中で雨の中を寄り添って歩く。
「今、両親とも留守だから…家に来てもらってもあまりたいした事出来ないけど。」
「そんなんじゃないよ。ただちょっと…」
「?」
とアキラが小首を傾げるようにしてヒカルを見つめる。
「ちょっとだけ、塔矢の意見が聞きたかったんだよ。」
「この前の君と森下九段の一局?」
「そう。」
アキラがヒカルの顔を見ながら話すのとに対し、ヒカルは何故かぶっきらぼうに前方を
見つめたままだった。それでもちらちらと横目でアキラの横顔を盗み見ていて、アキラと
目が合うとまた慌てて前を向く。
「…?」
アキラが不思議そうにヒカルの横顔を見つめる間はヒカルはこちらを見ようとしなかった。

「どうぞ、上がって。肩とか濡れてない?今タオル持って来るから。」
「あ、いいよ、大丈夫。オレもタオル持ってるし。」
ヒカルは一度だけこの家のすぐ前まで来た事があった。佐為を捜しに。
あれ程対局を望んだ塔矢元名人のところに引っ掛かっていやしないかと思いながら。
今思うと馬鹿馬鹿しいのだが、少しでも可能性があれば当時は動かないではいられなかった。
中に入ってみて気品のある旧い日本家屋独特の匂いと陰影に、囲碁の神様が住んでいたって
おかしくない、威厳のような空気をヒカルは感じないではいられなかった。



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