白と黒の宴 70


(70)
アキラがお茶を煎れてお盆に適当にお茶請けと供に乗せて自分の部屋に戻ると、先に
通されていたヒカルが興味深げに部屋を見回していた。
本棚やローチェアーの中を覗き込んで自分だったら本屋で到底手に取らないであろう類いの
小説やらよその国の史記らしきものの背表紙の題字をぶつぶつ読んでいる。
「塔矢の本棚、漫画ってないんだな。読んだ事ないのか?」
「あるよ。ドラエもんとか。」
「…う、うん。ドラエもんか。」
「あまり見ないでよ。恥ずかしいよ。」
適当な場所にお茶を置くとアキラは部屋の片隅に立て掛けてあった碁盤を出して準備した。
「そこの押し入れの中に座ぶとんが入っているんだ。2枚、出して。」
「あ、ああ」
押し入れの戸を開けても何かが転がり落ちて来るというアクシデントもなく、きちんと整とんされた
布団と衣装ケースの並びにヒカルはつまらなそうに下の段の座ぶとんを運び出す。
「悪かったね、面白いものが何もなくて。」
アキラはヒカルをなだめるように笑んで仕事で着ていたスーツの上着だけ脱いで
ヒカルから座ぶとんを受け取る。
「いやまあ、別に…」
少し好奇心を表に出し過ぎた事を恥じて頭を掻きながらヒカルもどっかりと腰を降ろす。
そしてすぐに真面目な表情で碁盤の上に両方の碁石を手早く並べ始めた。
アキラも身を乗り出すようにしてそれに見入った。



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