白と黒の宴 72


(72)
紆余曲折を経て盤上には今はヒカルと森下の終局面が並んでいる。ヒカルは結果にかなり不満のようだが
アキラはヒカルがさらに成長しているのを目の当たりに感じていた。森下門下の他の棋士らのレベルを
推し計るのは失礼だが、今のヒカルと正面から論じ合う事が出来る者がどれくらい居るだろう。

「…でも、負けたんだよな、…オレ…」
寝転がったヒカルがボソリと呟く。思い掛けないヒカルの弱音にアキラは一瞬ドキリとした。
「進藤…?」
ヒカルの傍に寄って、声をかける。
と、突然ヒカルに腕を引っ張られそのままヒカルの体の上に崩れかかって
両腕でヒカルに抱き締められた。
「よかった。…以前の塔矢と変わりなくて。何かおかしかったから、この前オレん家に来た時…」
ヒカルの胸の上に横顔を乗せた状態で、ヒカルの声がヒカルの体温を伝わってアキラの耳に届く。
「ゴメン、…心配させちゃったかな。ボクは大丈夫だから。」
検討会がどうのこうのというのは口実で、本当は自分の事を気にかけてくれていて会いに
来てくれのだと分かってアキラには本当に嬉しかった。
ヒカルの両腕はただひたむきにアキラの体を抱きしめて他に動こうとはしない。そんなヒカルに
こうして自分の体重を預けていると、湖上に浮かぶ小舟で漂うような落ち着いた気持ちになれた。
そんなささやかな静寂はグルルルルル、ニュルという豪快なヒカルのお腹の虫の鳴く音であっけなく破られた。
それでも暫く黙って二人はそのままの姿勢でいた。
「…最後、変な音したよね。」
「…うるせーなー。」



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