病床小アキラ 8
(8)
んしょんしょと掛け声をかけながら、アキラくんは緒方さんの腕の中で方向転換をします。
「ウン、おいしいね」
「でしょ? おがたくんも、うさぎちゃんにごめんなさいだよ?」
アキラくんの真剣な眼差しに、緒方さんはつい吹き出しそうになりました。
しかし、アキラくんの真剣な表情は変わりません。緒方さんはヤレヤレと思いながらも、大きな声で
「うさぎちゃんゴメンナサイ」をしました。
とりあえず頭を下げると、アキラくんもつられて頭を下げています。
「大分元気になったみたいだね」
緒方さんはおでことおでこをくっつけてアキラくんの熱を計ると、きゅっと抱き着いてきたアキラくん
をゆらゆらと揺らしました。
「ん、熱も少しは下がったみたいだ」
「ほんと〜?」
あふぅと大きくあくびをしながら、アキラくんは緒方さんに体重を預けてきます。
「本当だよ。頭がガンガンする?」
アキラくんはぷるぷると頭を振ると、『ガンガンしなーい!』とはりきって右手を上げました。あんまり
はりきりすぎたので、アキラくんの小さな右手は俯いてアキラくんの様子を見ていた緒方さんのおでこを
直撃してしまいました。
「いたい……」
アキラくんは泣きそうです。しかし、緒方さんの方が泣きたい気持ちでいっぱいでした。
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