白と黒の宴 9


(9)
アキラにとって緒方は特殊な存在だ。兄として父として、師として、つかず離れず常に自分を導いてくれた。
言葉で言わなくても緒方がどんなに自分の事を大切に思ってくれているかもアキラは知っている。
ドアを開けると緒方は真直ぐに目的の物がある机の上の書類の箱に向かった。
「ああ、これだ。」
ちらりと中身を見て、書類の封筒を取り出すとまた真直ぐ出入り口のところに立つアキラの方に向かって来る。
和室の方に関心を向ける様子はない。
「悪かったな、アキラくん。さて、何を食おうか。」
アキラが安心しかけたその時、緒方が床の隅に落ちていた紙片に気付いて拾い上げた。
「何だ、これは。」
何気なくアキラは緒方の手のその紙片を見た。その瞬間体から血の気が引いた。
新幹線のチケットだった。
破られた右隅の部分で新大阪の文字が見てとれる。
アキラは必死で碁会所で社がチケットを破いた時の事を思い返した。
アキラの目の前で社はチケットを破いた。そんなに細かく裂いた訳ではない。
一部はひらりと床に落ちたかもしれない。社は無造作にそれを学生服のポケットに突っ込んだ…。
和室から出ようとしたアキラを社が捕らえて後ろに引き倒した。ここで揉み合った。

「アキラくん!?」
自分では普通に立っているつもりだった。
気がつくと緒方の腕の中に倒れこんでいた。正確には、目眩をおこしたように膝を崩しかけたアキラを
緒方が抱きとめたのだ。



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