裏失楽園 39 - 40


(39)
「……キミは下世話なことに、オレが進藤とセックスすると想像してオレのマンションまで乗り込ん
で来たわけか。オレが鍵を渡しても一度も自分から足を運ぼうとしなかった、ここまで」
 キミもやっぱり人の子なんだな。俗っぽいことをする――と緒方さんは早口に吐き捨て、押さえつけて
いた進藤が身に付けていたバスローブの胸元を何の躊躇いも無く両手で開いた。
「緒方さん!」
「センセっ、何すんだよっ」
 ボクと進藤はほぼ同時に叫ぶ。進藤は手足をバタつかせ、ボクは近寄りたくもなかったベッドの側に
駆け寄った。緒方さんが進藤を暴こうとする動きを阻むために手を伸ばしたが、緒方さんの背中越しに
覗く進藤の肌があまりに健康的な色をしていたことに気づき――、思わず顔を背ける。
 ベッドから引き離した視界の隅に、緒方さんが外した眼鏡をサイドボードに几帳面に置くのが映った。
「アキラくん、キミはそこで見ているんだ」
 こういうときまで何の感情も窺い知れない声が、ボクに毅然と命じる。緒方さんはボクにとって絶対の
存在だ。口調こそは穏やかだが、決してボクは逆らえない。それでも、ボクは視線をベッドの上に戻す
ことはできなかった。否、彼を止めようと思っているのに、身体が言うことを聞かないのだ。
「最後までだ。――いいね?」
 背筋を冷たい汗が伝う。……緒方さんは、本気だ。


(40)
 緒方さんはボクを見据えたままだった。顔を背けていても、その強い視線がボクの身体を突き刺
していることははっきりと判った。
「………う」
 ボクのすぐそばで、うめく進藤の声がする。
「アキラくん、見るんだ」
 後ろずさりするボクを気配で感じたのか、緒方さんは鋭い声で再度ボクにそう命じた。
「あぅっ」
 すかさず小さな進藤の悲鳴が聞こえ、ボクはそろそろと視線をベッドの上に戻した。
 広すぎるベッドの上で、進藤が拘束された腕を振り払うように上半身をくねらせている。
 ――その動きがどれだけ相手を煽るのか、全く気づいてはいないのだろう。
 ベルトで辛うじて彼の身体に留まっているバスローブは、進藤と緒方さん双方の動きでほとんど
身に付けていないも同然だった。
 四つんばいになっている緒方さんの片足は進藤の両足の間に捻じり込まれ、そこがゆるゆると
動いている。緒方さんが膝を使って進藤に愛撫を施すのが、いやにはっきりと見えた。
「ん…っ、ヤメ――」 
 進藤が嫌がって、何度も首を振る。
 立ち尽くすボクを独り残して、緒方さんは進藤の胸に手を伸ばし――組み敷いている進藤の膚を
確かめるように撫でた。
 ボクの中に、ドロドロとした何かが溜まっていく。床に足をつけて立っているという当たり前の
感覚は全くなくなっていた。



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