裏失楽園 47 - 48
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「オマエも可哀相にな」
緒方さんは指先についた彼の精液をバスローブで執拗に拭い、彼の頬を撫でながら、優しいと
さえ錯覚してしまいそうな柔らかな声で進藤にゆっくりと語りかける。
「…彼がオマエに興味を持ったり、ましてや抱こうなんて思わなかったら、――オレを疑ったり
しなければ、こんなことにはならなかったのにな」
「だって………!」
緒方さんの行動の原因の全てがボクの言動にあるとは、どうしても思えなかった。緒方さんは
いつも自信家で、恋だの愛だのにうつつを抜かす人間を軽蔑しさえしていたのだ。
だが、彼の態度が豹変したのは、確かに緒方さんを疑った瞬間からであり、あのようなセックスを
強要されたのも、恐らくは進藤との関係が彼に知れたためだった。
……まさか、そんなはずがない。
鳩尾の辺りが鈍く痛み、ボクは拳を握ってそれを堪えた。
「進藤? ――言っておくが、これで終わったわけじゃない」
緒方さんはその冷たく整った表情を歪めて笑うと、ベルトを緩めひどくゆっくりとした仕種で
ジッパーを下ろした。
「イイ思いをしたのはオマエだけだろう?」
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それを前立てから取り出した緒方さんは、その逞しさを見せつけるように側面を軽く2・3度撫でた。
それだけで緒方さんの牡の部分はより硬度と巨きさを増したようだった。
いやらしいボクはそこから目を逸らすことができないでいる。また、それは進藤も同じだったらしい。
虚ろだった瞳は、怯えを含んだ色をして緒方さんの取り出されたものを注視していた。
「デカいか? ――大丈夫だ。アキラくんはいつもこれを咥え込んでる」
同意を得るようにボクの顔を見る緒方さんの整った白皙は、まるで悪びれていない。むしろボクと
進藤の2人を悪戯にからかって楽しんでいるようにも思えた。
「慣れると、自分から腰を振ってねだってくるようになる。自分で入れたり出したり……信じられ
ないだろうが、ストイックなように見えてアキラくんはとても快楽に貪欲だ」
「………っ」
ただでさえ大きな目を見開いて、まっすぐにボクを見つめる進藤の視線が、痛い。緒方さんが言って
いることが決して嘘ではないことを知っているから、だからボクは目を閉じて顔を背けた。先刻の進藤
のように。
鳩尾の奥から響いてくる鈍い痛みはそれを意識し出してからは余計に酷くなり、心臓が血液を送り出す
鼓動と共に、ズキズキと身体に響いてくるようだった。
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