裏失楽園 5 - 6


(5)
「アイツはこの身体のどこに触れた?」
 緒方さんは低い声で囁きながら、ボクの身体のあちこちを確かめるように辿っていく。
「ここか? それとも――ここか?」
「あ……っ」
 時折、どうしても身体が反応してしまうポイントを刺激され、ボクはビクリと肌を震わせた。
 上半身が裸のボクとは対照的に、彼はネクタイの結び目を緩めただけで少しの着衣の乱れもない。
「ここは触られた?」
 彼のボタンに手をかけようとすると、ボクを後ろ向きにして、緒方さんは背後からボクの脇腹を
指先で刺激し始めた。それだけでボクの膝はカクカクと震え出した。
 下から爪先で撫で上げられて、背筋を悪寒にも似た何かが走り抜ける。
 ボクは夢中になって首を振った。
 ――だって、ソコが弱いことを知っているのは、緒方さんだけだ。
 緒方さんが見つけて、緒方さんがそこをもっと敏感にさせた。
 進藤とは、そういうところを見つけ合う余裕さえ生まれなかった。
「……進藤にね、キミがここを弱いことを教えてやったから、きっとこれからは進藤もここを
攻めてくるな。――楽しみだろう?」
 緒方さんは本気なのだろうか。
「嫌、です……っ」
 彼は本気で、ボクを進藤と共有しようとしているのだろうか。
 それとも、進藤をボクと共有しようとしているのだろうか。
「どうして……? キミが望んだんじゃないか」
 彼の低い声はボクの腰の辺りから聞こえてくる。緒方さんは床に跪いて背中にキスを落とした。
脇腹を摩っていた指の代わりに、温かく濡れたものがそこを滑っていく。
 彼の舌が通り過ぎた後は、唾液の冷たさだけが切なく残った。


(6)
 足が震えて、支え無しには立っていられない。ボクは身体を前のめりにさせて、壁に手をついた。
冷たい壁に火照る頬をおしつけて熱を逃がす。冷たさを感じるのは一瞬で、すぐに壁の冷たさは
ボクの体温と同化して気にならなくなった。
「……いい格好だな」
 背中の窪みに触れながら緒方さんが笑う。それで気づいた。緒方さんが腰を拘束しているから、
ボクの格好は腰だけを彼に向かって突き出したようになっていたのだ。
 慌てて腰を引こうとしたが、緒方さんの腕はビクともしない。それどころか彼は、ボクの
身に付けているパジャマのズボンに手を掛け、そのまま下着ごとずり下ろしはじめた。
 ボクは咄嗟に手で前を押さえる。ボクの下半身は、緒方さんが少し身体を撫でただけで
僅かながらも反応を見せはじめていた。
「…やめて、ください……」
「どうせ、そっちは進藤が触ったんだろう? イヤ、キミが進藤の中に入ったのか」
 冷静な声で参ったなと緒方さんは呟くとボクの手を強引に退かし、ソコを布越しに握り締めた。
「く……っ」
 そのまま形を確かめるように、ゆるゆると撫でられる。
 直接ではなく、着衣の上からのゆるやかな刺激の焦れったさに泣きたくなった。
 緒方さんは片手でボクをじわりじわりと追いつめながら、もう一方の手でボクの髪に触れた。
 彼がベッドに広がる長い髪に色気を感じると言ったから、だから伸ばし始めた髪を。
「全く…キミは誰とでも気軽に寝たりしない、その高潔そうなところが特に気に入ってたんだが」
「あ……っ、ぁ……あッ!」
 不意にぎゅっとそこと強く握り締められ、息が詰まる。
「生憎と、進藤の中に入ったココを可愛がってやれるほどオレの心は広くないんだ」
 耳朶にカリと歯が立てられ――背中を電流が駆け抜けた。



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