裏失楽園 63 - 64
(63)
緒方さんは膝を曲げて、ボクの背中を軽く挟みボクの身体を自分の方へ引き寄せるようにした。
ただでさえ密着していた彼を、より深いところまで呑み込むことになる。
喉の奥を刺激されて吐きそうになり、ボクは一度それを吐き出して横から唇で挟んだ。彼は無
理矢理ボクに自分を咥えさせるようなことはしないから、ボクが気まぐれに彼を扱っても、何を
しても許される。口で奉仕することを強いられたこともほとんどなかった。
ただ、ボクが彼の身体に顔を埋めると緒方さんは幼い頃にしてくれたように、ボクの髪に指を
絡ませ、褒めるように何度も頭を撫でてくれる。それが心地良かった。
「随分使ったな」
緒方さんはからかうように呟くと、ボクの背中に覆い被さるようにしてボクの後ろに温めた液
体を塗り込めた。
「早くして、ください」
進藤が来ないうちに、早く繋げて欲しかった。早く彼をボクの体内に納めて、進藤が帰ってく
るときには何もなかった振りをして服を着てしまいたい。ボクは彼にせがんだ。
入り口を撫でていた彼の指がくぷ、と入ってくる。
(64)
彼の器用な指が身体に侵入してくることによって生じる、えも言われぬ感触。
身体の奥からうねるように響いてくるそれに反応してみっともない声を上げないように、
ボクはキツク唇を噛んだ。
「3本に増やすよ。……いい?」
ボクはそっと彼の硬い大腿に手を置いた。頭の上から降ってくる低い声に頷く代わりに。
彼のスラックスは、ボクの指についた粘着質な水分を吸い取って少し色が変わる。
ボクの体内で彼の指が掻き回すように動き、ボクの中に入ったままの軸――おそらく中
指――の両側から硬い彼の指が一気に捻じり込んできた。
「うぁ…っ」
慣れてはいるけれども、それでもやはり簡単には受け容れることはできない。息が詰ま
るような衝撃に身体が自然と上の方へと移動すると、頬に彼の怒張したものがピタピタと
当たった。
ボクの吐く息をそこに感じるのか、目の前の『彼』は幹に太い血管を浮き上がらせている。
それを横から咥えたくなって口を開いたが、彼の指がボクの中でバラバラに動きはじめて
諦めた。その代わりに彼を舐める。そのツルツルとした舌触りが何かに似ていると思ったが、
どうしても思い出せなかった。
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