裏失楽園 65 - 66
(65)
彼の指に体の中をぐちゃぐちゃに掻き回された。やがて、温くなった液体が勢いよく注
ぎ込まれ、ボクは彼の草むらに何度も頬を擦り付けた。
「気分が悪くなったら、すぐに言いなさい」
緒方さんは優しい声でボクを気遣う振りをし、ゆっくりとボクをほぐす作業を繰り返す。
後ろをこんな風に探られることは快感などでは決してない。かといってその行為をボクが
嫌悪するわけでもなかった。
乱暴にしようと思えばいくらでもできるはずなのに、緒方さんはそうしない。彼のポリ
シーなのかもしれないが、その心遣いはボクを蕩けさせるに十分だった。
「は……、っやく……」
胸が張り裂けそうになるこの感情を、”切ない”と表現する以外に何と言えばいいのか
――ボクは判りかねていた。
焦れて、どうしようもなく焦れて、ボクは目の前のそれにかぷりと歯を立てた。
緒方さんの指の動きが一瞬止まる。
「…ん……っ!」
その次の瞬間にはボクの身体は赤ん坊のように浚われ、真後ろから彼に貫かれた。
(66)
緒方さんの逞しいシャフトは、そのままボクを支える軸そのものになった。
ボクは緒方さんに操られる人形のようにガクガク震え、そうしながらもシーツをたぐり
寄せて口に銜える。そうしなければ高い声を上げてしまいそうだった。
緒方さんは次第に激しく腰を打ち付けてくるが何も言わない。それは同じすぐ近くに進
藤がいるからというわけではなく、ただそういう人なだけだ。
銜えたシーツがあふれ出る唾液を吸い取り、冷たくなって頬に張り付く。その冷たい感
触が嫌で、ボクはシーツを吐き出した。シーツと一緒に抑えていた声も零れる。
「ぅ……、あっ、ん────」
声は一度溢れると、もう止める手だてがなくなってしまった。
彼は掠れた声を上げることしかできないボクに後ろから覆い被さって来て、密着させた
腰を小刻みに動かす。彼のベルトの金具が当たって肌が粟だったけれども、すぐにその冷
たさも忘れた。
「苦しいかい?」
耳朶を軽く咬みながら緒方さんは確認するように訊ねてくる。彼を受け入れたところは
違和感があるだけで、痛くもなく苦しくもない。
ボクはかぶりを振った。今よりも、指を3本も入れられて体内でバラバラに動かされた
先程の方が余程どうにかなってしまうと思った。
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