裏失楽園 69 - 71


(69)
「んっ、」
 2本の指で突起を挟まれた。挟んだふたつの指に乳首をキツク抓られるのは、彼が力を込め
てボクの身体を掴もうとしているからだ。
 速い速度で身体の中を熱く擦り上げる緒方さんを感じながら、ボクの手の動きもフィニッシュ
を迎えるまでは止まりそうになかった。
 もう大分時間が過ぎてしまっているのはボクとて判っている。今にもあのドアをノックする
音が聞こえてきそうな恐怖があるが、それを凌駕する快楽がボクの中には確かに存在していた。
「……い…?………」
 耳朶を含まれ、彼の声を聞こうとした鼓膜の反応が彼の舌に邪魔されて鈍くなる。耳の中は
産毛が生えているから、だからそこを舐められると身体がざわつく。背筋が寒いのも肌が粟立
つのも実は気持ちがいいからで、そのことを教えてくれたのは緒方さんだった。
 案の定、そうされるとボクは一層もどかしく身体を震わせてしまう。
「おが…さ――っも…でちゃ………っ」 
 仰向けになって彼を受け容れたまま、受け止めるものもないままに放つのは抵抗があった。
 ボクはカラカラに乾いた喉を唾液で潤しながら、必死で緒方さんに訴える。
「もうちょっと我慢して」


(70)
 だが、憎らしいほど冷静な声の緒方さんはボクの両手を上から押さえ、動きを封じ込めただ
けだった。
 両手が使えないならもう片方を動かすしかない。ボクは諦めて腰を上下にうねらせた。
「すっかり夢中だね。…そろそろいいよ」
 クスクスと笑いながら緒方さんはボクに許可を与える。腰の動きを止めた彼と、彼に止めら
れた自分の手の代わりに腰を動かしながら、我慢しなければならなかった先程と何か状況が変
わっただろうかとぼんやりと考える。
 とてもそうは思えないが、緒方さんの方もラストスパートに入っていたのだろうか。
 それとも何か別の――?
 そんな時だった。突然目の前が明るくなり、ボクは身体を強ばらせた。
 壁の向こうから長方形に切り取られた光が溢れてくる。
「緒方先生、オレのズボンやっぱり皺が――」
 ノックの音は聞こえなかった。進藤にノックの習慣がなかったのか、ボクが聞き逃したのか、
それは判らないけれど。
 ドアが開いたのは一瞬だったはずなのに、ボクの目にはスローモーションのようにゆっくり
と焼き付いた。
 開け放たれたドアの向こうに、進藤が――ボクの太陽が――目を見開いて立っていた。


(71)
「と……」
 彼に見られていることが判っているのに、手の動きを止められないでいるのは、惰性というよ
りもむしろ本能に近かった。
 進藤の足が一歩後ろに下がる。それは進藤がボクに対して抱いている心情のようにも思えた。
「――見るな!」
 ボクは叫んで、いやらしい指が一気に暴走しそうになるのを必死で押さえ込む。きちんと声が
出たかどうかは判らなかったが、そう口にせずにはいられなかった。
 彼に抱かれて、それだけでは飽き足らずに自分を夢中になって慰めている。ボクはそんな風に
進藤の大きな目に映っているのだろう。
 そして、それはやはりボクそのものなのだ。
 ボクの背後で、緒方さんの喉が低く笑みを刻む。彼の喉仏が震える振動を頭で感じた。
「いいところに来たな、進藤。――そこから、オレたちが繋がってるのが見えるか?」
 緒方さんの怒張したものは先程からずっとボクの身体の中深くに埋まっている。だが、それは
より深い繋がりをボクに強要していた。
 緒方さんはボクの左右の太股を下から掬い上げるようにして持ち上げる。ズル…と、それまで
身体の飢えを存分に満たしていた栓を抜かれるような感触がし、ボクはそこに力を入れるべきか
脱力すべきか判断がつかなくなった。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル