裏失楽園 79 - 80
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ボクたちは何となく始まってしまった感はあったけれども、どちらかの一方的な欲望に
よって始まったわけではなかった。だからというわけではないのかもしれないが、ボクが
するのと同じように、緒方さんもボクに口でしてくれることがある。
緒方さんの綺麗な指に身体を少し触られるだけでボクは目茶苦茶に感じて、いつも早い
時期に爆ぜてしまいそうになるから、彼は本格的にボクと愉しむ前に一度ボクを達かせて
くれるのだ。
片手で後ろを弄りながら空いた手で触ることもあるし、ソファにボクを浅く座らせて、
そして苦さの残る口で愛撫を加えることもある――丁度今のように。
ボクは彼の髪を掻き回すのが好きで、緒方さんはピチャピチャと音を立ててボクを舐め
ては、セックスの時にしか見せてくれない美しい裸の瞳でいつもボクを見上げていた。
進藤は……どんな顔を見せてくれるんだろう。
ボクは引き寄せる進藤の小さな頭の形や案外に柔らかい髪を指先で確かめながら、自分
の開いた両足の間に導く。
「きて――進藤」
ボクの意思で開いた脚は、両膝を進藤が、そして緒方さんが下から太股を持ち上げるよ
うにして支えていて、外気に無防備に晒された状態だった。ドロドロした色んなもので濡
れていた部分も急速に乾いていくようで、ボクは冷たく冷えきったそこに新たな湿気と熱
を求めた。
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進藤の顔はどんどん近づいて来る。
ボクの肩越しに緒方さんも見ているのだろう。相変わらずゆらゆらとボクの内部を刺激
しつづけているけれど、腰を打ちつける速度が次第に落ち着いてきた。
あと数センチで進藤がボクを癒してくれる。早く欲しくて、ボクは彼の頭を一層強く引
いた。ピンク色の舌を覗かせて、彼は自分の唇をするりと舐めた。
――もうすぐあの舌で、あの唇でボクを。
進藤が目を伏せると、意外にもとても長い睫毛が強調される。
まだ何か躊躇いがあるのか、進藤は首をグッと突っ張らせてぎゅっと目を閉じた。
「オ…レ」
「ん……なに……?」
ボクはシーツの上についた両手に力を入れて腰を浮かせると、彼の顔の側に精一杯近づ
ける。一瞬緒方さんが出て行きそうになって焦ったけれど、彼はすかさず腰を進めてボク
の中にまた納まった。ずっと彼が中にいるため、後ろの感覚はもう痺れたように麻痺して
いて、内臓にかかる圧迫感と拓かれる快感だけがリアルに感じられる。
痛みはあまり感じられず、目一杯広げられた入り口の痛みよりも、脚を大きく開いた股
関節の痛みの方がずっと大きかった。
「オレは……」
進藤が言葉を吐く度に温かな吐息が剥き出しのボクにかかる。それだけでボクの身体は
ピクリと震え、その動揺は緒方さんに伝わった。
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